歩・車混合交通における安全走行と
走行所要時間に関するシミュレーション解析


土木工学科30期生 16番  澤田良子
          34番  森岡 誠

指導教官       竹内光生 助教授




1.はじめに
近年の交通事故は、「第二次交通戦争」と言われるほどに厳しさを増し、高齢者の関係した事故件数の増加がその特徴とされている。 我が国の道路幅員は狭く、筆者等は、狭幅員道路における交通安全対策の1つは、歩行者等の通行帯の確保(路側帯の拡幅)とともに、法的な速度規制や物理的な速度規制であると考えている。 本研究では、路側帯の拡幅や速度規制をした場合に、自動車が、歩行者の通行する狭幅員道路を、安全走行する交通状況をモデル化し、1km走行所要時間・ブレーキ回数の変化を求めたものである。

2.道路の現状
交通事故を防止するためには、自動車や自転車、歩行者の通行帯を分離する必要があるとされている。 しかし、平成9年度の「高知県の新たな道路整備計画 中間報告書」によると、道路改良率(車道幅員5.5m以上の延長/実延長)は、全国平均約51%、高知県平均約36.8%である。 車道幅員5.5m未満の道路は、大型車のすれ違えない道路とされており、高知県では、県道の約7割、市町村道の約9割弱が未改良である。 また、一般に、幅員8m未満の道路は、歩道を設置することが困難な狭幅員道路に分類され、歩・車混合交通となっている。

3. 交通事故の現状
表1は、平成10年度の高知県内、道路形状別交通事故発生状況を示す。 大型車がすれ違えないとされる5.5m未満道路で、全事故件数の約28%(1521件/5380件)、歩道を設置できない狭幅員道路を含む5.5m以上9.5m未満の道路で約50%(2676件/5380件)、歩道を設置できる9.5m以上13.0m未満の2車線道路で約10%(558件/5380件)、4車線を確保できる13.0m以上19.5m未満の道路で約9%(495件/5380件)、19m以上の道路で約1%(37件/5380件)となっている。 自動車や歩行者等の混合交通環境での事故件数は、多いといえよう。 一般に、狭幅員道路は、広幅員道路に比べて、交通量が少なく、多発箇所は少ないものの、道路総延長に占める割合が大きいため、事故件数の累積は大きくなっている。 また、人対車のうち、対面背面事故件数も、年間62件発生している。


4.アンケート結果
アンケート調査で得られた、狭幅員道路を走行する車両が、歩行者を追い越す場合の、現状と理想の速度および側方余裕幅を、図1に示す。 被験者は、筆者等が通学する本校の学生、および教職員である。 図1によると、歩行者追い越し時の速度の平均は、現状は36.7km/h、理想は24.8km/hである。 現状では、40km/h以上で歩行者の側方を通過する事例も多くみられる。 理想では、20km/hから30km/hを望ましいとする被験者が多い。 また、歩行者追い越し時の横方向間隔の平均は、現状は0.92m、理想は1.41mである。 現状では、1.6m以上の事例もみられるが、0.6m以下の事例も多くみられる。 理想では、1.6mから2.0mが望ましいとする被験者が多くなっている。


5.シミュレーション分析
 アンケート調査結果等を参考に、狭幅員道路を対象とした車両の安全走行を次のように定義した。歩行者を追い越す場合は、20km/h(Vb)以下とし、充分な横方向間隔を確保するために、対向車が来ている場合は歩行者の追い越しは出来ないものとした。1km走行所要時間算定時の流れ図を図2に示す。歩行者の速度は4km/h(Vp)とした。発生確率はポアソン分布に従うものと仮定し、歩行者の交通量を100人/h(密度25人/km)、対向車の交通量を360台/hとした。 歩行者がいないときの最大走行速度V0を40km/h,30km/h,20km/hの3通りとし、各場合について1000回のシミュレーションを行った。 図3と図 4は、そのうちV0=40km/h走行時の最小所要時間と最大所要時間を示す場合の、1km走行時の速度変化の事例を、横軸に走行時間、縦軸に走行速度をとり示している。図の中で、V0=40km/h未満の速度変化は歩行者発見によって発生し、Vb=20km/h未満の速度変化は対向車発見によって発生する。右上がりの線は加速を表し、右下がりの線は減速を表す。走行速度 20km/hでの横方向に水平な線と走行速度4km/hからの加速の線は、歩行者追い越しを表す。走行速度4km/hでの横方向に平行な線は歩行者追随を表す。最大所要時間の場合、歩行者追随が多い。 

 図5は、40km/h、30km/h、20km/h、それぞれの速度の場合の1km走行所要時間と減速回数の関係を、1000回のシミュレーションについて示す。 1km走行所要時間は、40km/h(90秒)の時145秒~283秒、30km/h(120秒)の時171秒~300秒、20km/h(180秒)の時199秒~323秒である。なお、( )内の値は、歩行者がいない場合の1km走行所要時間である。最小値および最大値で所要時間比較すれば、40km/h時<30km/h時<20km/h時の関係である。一般に、最大所要時間の影響が大きいと思われる。しかし、交通 図4 最大所要時間時の速度変化 安全という視点で比較すれば、例えば40/20=2倍という最大規制速度V0の速度増に比べて、計算例での所要時間の短縮は小さく、(323-283)/283=約12.4%である。また、最大と最小所要時間の差で示す所要時間のバラツキは、40km/h時138秒>30km/h時129秒>20km/h時124秒である。 ブレーキ回数は、40km/h(0回)の時14回~25回、30km/h(0回)の時18回~30回、20km/h(0回)の時7回~23回である。なお、( )内の値は、歩行者がいない場合のブレーキ回数である。20km/h時のブレーキ回数が最も少なくなっている。なお、40km/h時よりも30km/h時が増加している。

6.まとめ
本研究では、狭幅員道路の速度規制を、歩行者追い越し時の安全走行という視点から、40km/h、30km/h、20km/hの3通りで比較検討した。わが国の住区地区内の規制速度は30km/hとする場合が多い。本研究の計算例では、必ずしも30km/hが望ましいとは言えないことがわかった。走行所要時間で観ると40km/hが望ましい。所要時間のばらつきやブレーキ回数では20km/hが望ましい。今後、交通量を変量として検討したい。

<参考文献>
1)高知県警察本部:平成10年 高知県交通白書
2)総務庁:平成11年版 交通安全白書
3)警察庁交通局/建設省都市局・道路局:コミュニティ・ゾーン形成マニュアル
4)第22回 日本道路会議論文集 一般論文集(A)
5)第31回 日本都市計画学会学術論文集
6)平成9年度 土木学会関西支部年次学術講演




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